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本記事はGeminiの出力をプロンプト工学で整理した業務ドラフト(未検証)です。

プロンプトエンジニアリングは、大規模言語モデル(LLM)の能力を最大限に引き出すための重要な技術です。しかし、その設計は容易ではなく、ハルシネーション(幻覚)や様式崩れ、指示逸脱といった様々な失敗モードに直面します。本稿では、プロンプトエンジニアリングにおけるこれらの失敗モードを特定し、その抑制手法、具体的なプロンプト設計、評価戦略、そして反復的な改良プロセスについて解説します。

1. ユースケース定義

ニュース記事の要約タスクを想定します。LLMが提供されたニュース記事の内容を正確に抽出し、指定された形式で簡潔に要約することを目的とします。特に、事実に基づかない情報の生成(ハルシネーション)を厳しく抑制する必要があります。

2. 入出力契約(制約付き仕様化)

この要約タスクにおける入出力契約を以下のように定義します。

入力契約:

  • フォーマット: プレーンテキストまたはMarkdown形式のニュース記事。

  • 内容: 最新の出来事、技術、経済、社会に関する記事。

  • 制約:

    • 言語: 日本語のみ。

    • 最大長: 10,000トークン。

出力契約:

  • フォーマット: 以下の構造を持つJSON文字列。

    {
      "title": "元の記事から抽出したタイトル",
      "summary": "記事の主要な内容を200文字以内で簡潔に要約(事実のみ)",
      "keywords": ["関連キーワード1", "関連キーワード2", "関連キーワード3"],
      "sentiment": "ポジティブ/ネガティブ/ニュートラル"
    }
    
  • 内容:

    • title: 元記事のタイトルを正確に抽出すること。

    • summary: 記事の内容に厳密に基づき、事実と異なる情報を生成しないこと。要約は簡潔かつ客観的であること。

    • keywords: 記事から主要なキーワードを3つ抽出すること。

    • sentiment: 記事全体の感情を「ポジティブ」「ネガティブ」「ニュートラル」のいずれかで分類すること。

  • 失敗時の挙動: 上記の出力フォーマットまたは内容制約を満たせない場合、以下のJSON形式でエラーメッセージを返す。

    {
      "error": "指定された要約要件を満たせませんでした。記事の内容を確認してください。",
      "reason": "ハルシネーションの検出、フォーマット不遵守、または情報不足"
    }
    
  • 禁止事項:

    • 元の記事に存在しない情報を生成すること(ハルシネーション)。

    • 個人の意見や主観的な評価を含めること。

    • 出力JSON以外のテキストや追加の説明を含めること。

3. プロンプト設計

以下に、ニュース記事要約タスクにおけるプロンプト案を3種類提示します。

3.1. System指示(共通)

すべてのプロンプトに共通して、LLMの挙動を制約するSystem指示を定義します。

あなたはニュース記事を専門的に要約するアシスタントです。提供された記事の内容に厳密に基づき、事実のみを抽出し、以下のJSONフォーマットで出力してください。決して元の記事にない情報を追加したり、主観的な意見を述べたりしないでください。出力はJSON形式のみとし、他のテキストは一切含めないでください。

3.2. ゼロショットプロンプト

基本的な指示のみを含むプロンプトです。

[System指示(上記)]

以下のニュース記事を要約し、指定のJSON形式で出力してください。

# ニュース記事

{{ニュース記事本文}}

3.3. 少数例(Few-shot)プロンプト

具体的な入力と期待される出力の例をいくつか示すことで、LLMの理解を深めます。

[System指示(上記)]

以下のニュース記事を要約し、指定のJSON形式で出力してください。

# 例1: 入力

## ニュース記事

大規模言語モデル(LLM)の進化が急速に進んでいます。2024年7月25日、GoogleはGeminiの新しいアップデートを発表し、多モーダル推論能力が大幅に向上しました。これにより、より複雑な指示や多様なデータ形式に対応できるようになり、開発者の間では新たな応用への期待が高まっています。しかし、同時にハルシネーションのリスク管理や、倫理的な利用に関する議論も活発化しています。

# 例1: 出力

```json
{
  "title": "Google Gemini新アップデート、多モーダル能力向上と課題",
  "summary": "2024年7月25日、GoogleはGeminiの多モーダル推論能力を向上させるアップデートを発表しました。これにより複雑な指示に対応可能になり、新たな応用が期待されますが、ハルシネーションや倫理的利用のリスク管理が課題です。",
  "keywords": ["Gemini", "多モーダル", "ハルシネーション"],
  "sentiment": "ニュートラル"
}

ニュース記事

{{ニュース記事本文}}

#### 3.4. Chain-of-Thought(CoT)制約型プロンプト

LLMに思考プロセスを段階的に踏ませることで、複雑な指示への対応力と正確性を向上させます。特にハルシネーション抑制には、事実確認のステップを指示することが有効です。

```text
[System指示(上記)]

以下のニュース記事を要約し、指定のJSON形式で出力してください。要約する前に、以下の思考ステップを厳密に実行してください。

<思考ステップ>

1. **主要事実の抽出**: 記事全体を読み、日付、組織名、人名、具体的な出来事、数値などの主要な事実をリストアップする。

2. **ハルシネーションチェック**: 抽出した各事実が元の記事に明確に記述されているかを確認する。記事にない情報はリストから削除する。

3. **要点の統合**: 抽出された事実に基づき、記事の最も重要なメッセージを200文字以内でまとめる。この際、客観的な表現を維持し、事実と異なる解釈や推測を絶対に行わない。

4. **キーワードの特定**: 記事全体で繰り返し登場する、または最も重要な概念を示す単語を3つ特定する。

5. **感情分析**: 記事の内容から全体的なトーンを「ポジティブ」「ネガティブ」「ニュートラル」のいずれかで判断する。
</思考ステップ>

# ニュース記事

{{ニュース記事本文}}

4. 評価シナリオと自動評価

4.1. 評価シナリオ

  • 正例: 構造が明確で、主要な事実がはっきりと記載されている一般的なニュース記事。

  • 難例: 複数のテーマが混在している、または曖昧な表現が多く含まれる記事。ハルシネーションのリスクが高まる。

  • コーナーケース:

    • 情報不足: 要約に必要な情報がほとんどない、極端に短い記事。

    • 矛盾する情報: 記事内に矛盾する事実が含まれている場合(非常に稀だが、LLMが混乱する可能性がある)。

    • 禁止事項誘発: 意図的に主観的な意見や推測を促すような記事(例: 「この出来事についてどう思いますか?」と記事自体が問いかけている場合)。

4.2. 自動評価擬似コード

LLMの出力を自動的に評価するための擬似コードを提示します。

import json
import re

def evaluate_summary(llm_output: str, original_article: str, expected_keywords: list, article_sentiment: str) -> dict:
    """
    LLMによる要約出力を自動評価する関数。
    入力:
        llm_output (str): LLMの生成したJSON文字列。
        original_article (str): 元のニュース記事本文。
        expected_keywords (list): 記事から事前に抽出された期待されるキーワードのリスト。
        article_sentiment (str): 記事の期待される感情 ("ポジティブ", "ネガティブ", "ニュートラル")。
    出力:
        dict: 評価結果とスコア。
    """
    results = {
        "score": 0,
        "feedback": []
    }

    try:
        output_json = json.loads(llm_output)
    except json.JSONDecodeError:
        results["feedback"].append("JSONフォーマットが不正です。")
        return results

    # 1. フォーマットチェック (30点)

    if not all(k in output_json for k in ["title", "summary", "keywords", "sentiment"]):
        results["feedback"].append("必須キー (title, summary, keywords, sentiment) が不足しています。")
    else:
        results["score"] += 10 # キー存在で10点
        if isinstance(output_json["title"], str) and \
           isinstance(output_json["summary"], str) and \
           isinstance(output_json["keywords"], list) and \
           isinstance(output_json["sentiment"], str):
            results["score"] += 10 # 型チェックで10点
            if len(output_json["keywords"]) == 3:
                results["score"] += 5 # キーワード数で5点
            else:
                results["feedback"].append(f"キーワードの数が不正です: {len(output_json['keywords'])}個 (期待値: 3個)。")
            if output_json["sentiment"] in ["ポジティブ", "ネガティブ", "ニュートラル"]:
                results["score"] += 5 # 感情分類値で5点
            else:
                results["feedback"].append(f"感情分類の値が不正です: {output_json['sentiment']} (期待値: ポジティブ/ネガティブ/ニュートラル)。")
        else:
            results["feedback"].append("JSON値の型が不正です。")

    # 2. 要約の文字数チェック (20点)

    summary_text = output_json.get("summary", "")
    if 0 < len(summary_text) <= 200:
        results["score"] += 20
    else:
        results["feedback"].append(f"要約の文字数が200文字を超過しています ({len(summary_text)}文字)。")

    # 3. ハルシネーション/事実正確性チェック (自動評価は困難だが、部分的に実施) (30点)


    # 簡易チェック: 要約内のキーワードが元の記事に存在するか


    # より高度なチェックには、RAG、NLI (自然言語推論) モデル、または手動レビューが必要

    hallucination_detected = False
    for word in output_json.get("keywords", []):
        if word not in original_article: # 簡易的なキーワード存在確認
            hallucination_detected = True
            results["feedback"].append(f"キーワード '{word}' が元の記事に見つかりません (ハルシネーションの可能性)。")
            break

    # より高度なハルシネーション検出は、外部APIや専門モデルとの連携が必要


    # 例: fact_check_api.check(summary_text, original_article)

    if not hallucination_detected:
        results["score"] += 15 # キーワードレベルでのハルシネーションなしで15点

        # さらに、要約の主要な事実が記事に含まれているか簡易チェック (正規表現など)


        # 例: if re.search(r"Gemini.*アップデート", summary_text) and "Gemini" in original_article:


        #    results["score"] += 15

    # 4. キーワード適合度チェック (10点)

    matched_keywords = set(output_json.get("keywords", [])) & set(expected_keywords)
    results["score"] += len(matched_keywords) * (10 / len(expected_keywords)) # 一致数に応じて加点

    # 5. 感情分類の正確性チェック (10点)

    if output_json.get("sentiment") == article_sentiment:
        results["score"] += 10
    else:
        results["feedback"].append(f"感情分類が不正確です。期待値: '{article_sentiment}', 実際: '{output_json.get('sentiment')}'。")

    results["score"] = min(results["score"], 100) # スコアを100点に制限
    return results

# 使用例 (JST: 2024年7月30日)


# article_text = """大規模言語モデル(LLM)の進化が急速に進んでいます。2024年7月25日、GoogleはGeminiの新しいアップデートを発表し、多モーダル推論能力が大幅に向上しました。これにより、より複雑な指示や多様なデータ形式に対応できるようになり、開発者の間では新たな応用への期待が高まっています。しかし、同時にハルシネーションのリスク管理や、倫理的な利用に関する議論も活発化しています。"""


# expected_keywords = ["Gemini", "多モーダル", "ハルシネーション"]


# article_sentiment = "ニュートラル"


# llm_output_example = """{"title": "Google Gemini新アップデート、多モーダル能力向上と課題","summary": "2024年7月25日、GoogleはGeminiの多モーダル推論能力を向上させるアップデートを発表しました。これにより複雑な指示に対応可能になり、新たな応用が期待されますが、ハルシネーションや倫理的利用のリスク管理が課題です。","keywords": ["Gemini", "多モーダル", "ハルシネーション"],"sentiment": "ニュートラル"}"""


# print(evaluate_summary(llm_output_example, article_text, expected_keywords, article_sentiment))
  • 計算量: json.loads は入力サイズに比例。文字列検索は記事の長さとキーワード数に比例。総じて、入力記事の長さ L に対して O(L)

  • メモリ条件: 入力JSONと記事本文をメモリに保持。通常数MB以内。

5. プロンプトエンジニアリングの失敗モードと抑制手法

失敗モード 説明 抑制手法
ハルシネーション(幻覚) 事実に基づかない、または元の情報に存在しない内容を自信満々に生成する。 RAG (Retrieval Augmented Generation): 外部知識ベースから関連情報を検索し、それをプロンプトに含めてLLMに提示する。
System指示の強化: 「事実のみに基づけ」「推測するな」といった明確な禁止事項をSystem指示に含める。
検証ステップ: CoTで「事実を記事で確認せよ」と指示し、自己訂正を促す (Sebastian Schopf et al., 2024-02-09)。
外部検証: 生成された出力の事実を、外部APIやデータベースで確認する。
様式崩れ 指定されたJSONやMarkdownなどの出力フォーマットを守らない。 厳格な出力仕様の定義: JSON SchemaやPydanticモデルのような具体的なフォーマット構造をプロンプトで明確に指定する (Google Cloud, 2024-07-29)。
少数例プロンプト: 正しいフォーマットの例を複数示すことで、学習を促す。
出力パースとリトライ: アプリケーション側で出力フォーマットをパースし、失敗した場合はエラーメッセージとともにリトライを指示する。
脱線(指示逸脱) 指定されたタスク範囲から外れ、無関係な情報を生成したり、不必要な会話を始めたりする。 System指示の厳格化: LLMの役割とタスク範囲を明確に定義し、「~以外のことはするな」といったネガティブな制約も加える。
出力文字数・トークン数の制限: max_tokensなどのパラメータで出力の長さを物理的に制限する。
タスク分割: 複雑なタスクを複数の小さなステップに分割し、各ステップで具体的な指示を与える (OpenAI)。
禁止事項違反 倫理的・安全上の観点から禁止されている内容(暴力、差別、個人情報など)を生成する。 System指示での明確な禁止: 「○○な内容を生成してはならない」と明示的に指示する。
モデレーションAPIの利用: 出力された内容をモデレーションAPIでチェックし、不適切な場合はブロックする。
フィルタリング・後処理: アプリケーション側で不適切なキーワードやパターンを検出・削除する。
推論誤り 論理的なつながりや因果関係を誤って解釈し、不正確な推論結果を出す。 Chain-of-Thought (CoT) プロンプト: 「ステップバイステップで考えよ」「論理的根拠を示せ」と指示し、思考プロセスを明示させる (Tianyi Li et al., 2023-03-31)。
外部ツール利用: 計算や論理演算が必要な場合は、Pythonインタープリタや電卓APIの使用を促す。

6. プロンプトエンジニアリングの評価・改良ループ

プロンプトエンジニアリングは一度の設計で完結するものではなく、継続的な評価と改良が必要です (OpenAI)。この反復的なプロセスをMermaidのフローチャートで可視化します。

graph TD
    A["要求定義とユースケース定義"] --> B("プロンプトの設計");
    B --> C{"評価シナリオの作成"};
    C --> D["LLMによる出力生成"];
    D --> E{"自動/手動評価"};
    E -- 失敗モード検出 --> F["誤り分析"];
    F --> G{"改良戦略の策定"};
    G -- プロンプト修正/データ追加 --> B;
    E -- 成功 --> H["本番展開"];
  • A[要求定義とユースケース定義]:目的、入出力契約、性能要件を明確化する。

  • B(プロンプトの設計):System指示、Few-shot例、CoTなどを用いてプロンプトを作成する。

  • C{評価シナリオの作成}:正例、難例、コーナーケースなどのテストケースを準備する。

  • D[LLMによる出力生成]:作成したプロンプトをLLMに適用し、出力を得る。

  • E{自動/手動評価}:定義した評価基準(採点ルーブリック、正規表現など)に基づき、LLMの出力を評価する。

  • F[誤り分析]:検出された失敗モード(ハルシネーション、様式崩れなど)の原因を特定する。

  • G{改良戦略の策定}:分析結果に基づき、プロンプトの修正、外部知識の導入、評価基準の調整などの改良策を考案する。

  • H[本番展開]:評価が成功し、要求を満たした場合、プロンプトを運用環境にデプロイする。

7. まとめ

プロンプトエンジニアリングにおける失敗モード、特にハルシネーションは、LLMの信頼性に関わる深刻な課題です。本稿では、厳格な入出力契約の定義、ゼロショットからChain-of-Thought制約型まで複数のプロンプト設計、そして自動評価を含む評価シナリオを通じて、これらの失敗モードを抑制し、LLMの性能を最大化するための体系的なアプローチを示しました。Google Cloudの資料 (2024-07-25, 2024-07-29) や、OpenAIのガイド、arXivの論文 (2023-03-31, 2024-02-09) が示すように、このプロセスは反復的であり、継続的な評価と改良が成功の鍵となります。

ライセンス:本記事のテキスト/コードは特記なき限り CC BY 4.0 です。引用の際は出典URL(本ページ)を明記してください。
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