VBAでWin32 API GetAsyncKeyStateを使ったキー入力監視

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本記事はGeminiの出力をプロンプト工学で整理した業務ドラフト(未検証)です。

VBAでWin32 API GetAsyncKeyStateを使ったキー入力監視

背景と要件

OfficeアプリケーションでのVBAマクロ開発において、特定のキー入力をリアルタイムで監視し、それに応じた処理を実行したいという要件は少なくありません。例えば、Excelでデータ入力中に特定のショートカットキーを検知して自動処理を起動したり、Accessフォームで特定のキー操作をログに記録したりするケースです。

VBAにはApplication.OnKeyメソッドのようなキーボードイベントを捕捉する機能がありますが、これは特定のキーの「押下時」または「離上時」に一度だけ反応するものであり、キーが「現在押され続けている状態」や、非アクティブなウィンドウでのキー入力を継続的に監視する用途には適していません。また、リアルタイム性や柔軟性に限界があります。

このような背景から、VBAの標準機能では実現が難しい高度なキー入力監視には、Windows API(Win32 API)のGetAsyncKeyState関数を利用するのが効果的です。GetAsyncKeyStateは、キーボードの状態を非同期に取得できるため、VBAアプリケーションの応答性を損なわずに、高頻度でのキー入力監視を可能にします。 、VBAでGetAsyncKeyStateを宣言し、ExcelおよびAccessを対象に、実務レベルで再現可能なキー入力監視コードと、それに伴う性能チューニング、運用上の注意点、そして潜在的な落とし穴について解説します。

GetAsyncKeyStateとは

GetAsyncKeyStateは、指定された仮想キーの現在の状態を取得するためのWin32 API関数です[1]。この関数は、キーが現在押されているか(上位ビット)、または前回の呼び出し以降に押されたか(下位ビット)を非同期に判断します。これにより、アプリケーションが他の処理を実行中でも、リアルタイムに近いキーボード状態のポーリングが可能になります。

機能概要と戻り値

関数の宣言は以下の通りです。 SHORT GetAsyncKeyState( int vKey );

  • vKey: 監視対象となる仮想キーコードを指定します。仮想キーコードは、キーボード上の各キーやマウスボタン、特殊キーに割り当てられた一意の数値です[2]。

  • 戻り値 (SHORT):

    • 最上位ビット (Bit 15) がセットされている場合: キーが現在押されている状態です。

    • 最下位ビット (Bit 0) がセットされている場合: 前回のGetAsyncKeyState呼び出し以降に、キーが押された(または離された)状態が変化したことを示します。

VBAでは、戻り値が&H8000(最上位ビット)であるかどうか、&H1(最下位ビット)であるかどうかをビット演算で判定します。

Declare PtrSafeの重要性

VBAでWin32 APIを呼び出すには、Declareステートメントを使用して関数を宣言する必要があります。特に、64ビット版のOffice環境でVBAが動作する場合、ポインタを扱うAPI関数ではPtrSafeキーワードの追加が必須です[3]。これにより、ポインタやハンドルが64ビット値として正しく扱われ、互換性の問題やエラーを回避できます。

' 共通モジュールに記述するAPI宣言
#If VBA7 Then

    ' 64ビット版Officeの場合、PtrSafeが必要
    Private Declare PtrSafe Function GetAsyncKeyState Lib "user32" (ByVal vKey As Long) As Integer
#Else

    ' 32ビット版Officeの場合
    Private Declare Function GetAsyncKeyState Lib "user32" (ByVal vKey As Long) As Integer
#End If

設計

キー入力監視システムを設計する上で、以下の点を考慮します。

ポーリング方式の採用

GetAsyncKeyStateはポーリング方式のAPIであるため、定期的に関数を呼び出してキーの状態を確認するループが必要です。VBAでは、ExcelのApplication.OnTimeメソッドやAccessフォームのTimerイベントを活用して、このポーリングを非同期的に実現します。

監視対象キーの選定

監視したい特定のキー(例: Ctrl, Shift, Esc, F1など)を仮想キーコードで指定します。例えば、Escキーは&H1B、Ctrlキーは&H11です[2]。複数のキーの組み合わせ(例: Ctrl + C)も、それぞれのキーの状態を同時にチェックすることで実現可能です。

イベント処理の仕組み

キー入力が検知された場合、どのような処理を実行するかを定義します。例えば、特定のプロシージャの呼び出し、メッセージボックスの表示、ログ記録などが考えられます。

パフォーマンス考慮事項

ポーリング間隔が短いほど応答性は高まりますが、CPU使用率も増加します。適切なポーリング間隔(例: 50ms~200ms)を選ぶことが重要です。また、VBAの実行中に画面更新や自動計算が頻繁に発生するとパフォーマンスが低下するため、以下の対策を講じます。

  • DoEvents: 長時間処理中にOSに制御を戻し、アプリケーションが応答不能になるのを防ぎます[4]。しかし、多用はパフォーマンス低下を招くため、適切な頻度で使用します。

  • Application.ScreenUpdating = False: 処理中の画面更新を停止し、パフォーマンスを劇的に向上させます[6]。処理終了後にTrueに戻すのを忘れないようにします。

  • Application.Calculation = xlCalculationManual: Excelの自動計算モードを手動に切り替え、数式が多いシートでのパフォーマンスを改善します[7]。処理終了後に元のモードに戻します。

  • DAO/ADO最適化: Accessでデータベース操作を伴う場合、トランザクションの活用やバッチ更新(ADOのUpdateBatch、DAOのトランザクション)、DoCmd.SetWarnings Falseによるメッセージ抑制が効果的です[8][9]。

処理フロー(Mermaid図)

キー入力監視の基本的な処理フローは以下のようになります。

graph TD
    A["VBAマクロ開始"] --> B{"監視設定初期化"};
    B --> C["Win32 API GetAsyncKeyState宣言"];
    C --> D["監視ループ開始"];
    D --> E{"ポーリング間隔待機"};
    E --> F["GetAsyncKeyStateを呼び出し"];
    F --> G{"特定のキーが押されているか?"};
    G -- |はい| --> H["キー入力に応じた処理を実行"];
    G -- |いいえ| --> I["キーの状態を更新/記録"];
    H --> D;
    I --> D;
    D -- |停止条件が満たされた| --> J["監視ループ終了"];
    J --> K["VBAマクロ終了"];

実装

ここでは、ExcelとAccessそれぞれにおけるGetAsyncKeyStateを使ったキー入力監視の実装例を示します。

共通モジュールでのAPI宣言

以下のコードをExcelまたはAccessの標準モジュール(例: Module1)にコピーしてください。

' 標準モジュール (例: Module1) に記述

' Windows API の宣言
#If VBA7 Then

    ' 64ビット版Officeの場合、PtrSafeが必要 (2023年1月21日 JST更新) [3]
    Private Declare PtrSafe Function GetAsyncKeyState Lib "user32" (ByVal vKey As Long) As Integer
#Else

    ' 32ビット版Officeの場合
    Private Declare Function GetAsyncKeyState Lib "user32" (ByVal vKey As Long) As Integer
#End If

' 仮想キーコードの定数定義 (2024年4月23日 JST更新) [2]
Private Const VK_ESCAPE As Long = &H1B    ' Escキー
Private Const VK_CONTROL As Long = &H11   ' Ctrlキー
Private Const VK_SHIFT As Long = &H10     ' Shiftキー
Private Const VK_MENU As Long = &H12      ' Altキー
Private Const VK_LBUTTON As Long = &H01   ' 左マウスボタン
Private Const VK_RBUTTON As Long = &H02   ' 右マウスボタン
' 必要に応じて他の仮想キーコードを追加
' 例: VK_F1 = &H70, VK_A = &H41 など

' 監視状態管理のためのグローバル変数
Public IsMonitoring As Boolean
Public NextCheckTime As Date ' Excel.Application.OnTime 用の時刻

Excel VBAでの実装例

Excelでは、Application.OnTimeメソッド[5]を利用して非同期的なポーリングループを構築します。これにより、VBAコードがセル操作中であっても定期的にキーの状態をチェックできます。

コード1: ExcelでEscキーとCtrl+Cの組み合わせを監視

' 標準モジュール (例: Module1) に上記API宣言に続けて記述

' 監視開始プロシージャ
Public Sub StartKeyMonitor()
    If IsMonitoring Then Exit Sub

    IsMonitoring = True
    MsgBox "キー入力監視を開始しました。Escキーで停止、Ctrl+Cでメッセージ表示。", vbInformation

    ' パフォーマンスチューニング (2023年12月15日 JST更新) [6][7]
    With Application
        .ScreenUpdating = False ' 画面更新を停止
        .Calculation = xlCalculationManual ' 自動計算を停止
    End With

    ' 初回監視をスケジュール
    Call ScheduleNextCheck
End Sub

' 監視停止プロシージャ
Public Sub StopKeyMonitor()
    If Not IsMonitoring Then Exit Sub

    IsMonitoring = False
    ' スケジュールされたOnTimeイベントをキャンセル
    On Error Resume Next ' 実行中のOnTimeがない場合にエラー回避
    Application.OnTime EarliestTime:=NextCheckTime, Procedure:="MonitorKeys", Schedule:=False
    On Error GoTo 0

    ' パフォーマンスチューニングを元に戻す (2023年12月15日 JST更新) [6][7]
    With Application
        .ScreenUpdating = True ' 画面更新を再開
        .Calculation = xlCalculationAutomatic ' 自動計算を再開
    End With

    MsgBox "キー入力監視を停止しました。", vbInformation
End Sub

' 次の監視をスケジュールするヘルパープロシージャ
Private Sub ScheduleNextCheck()
    If IsMonitoring Then
        ' 50ミリ秒 (0.05秒) ごとにポーリング
        NextCheckTime = Now + TimeSerial(0, 0, 0) + TimeValue("00:00:00.050")
        Application.OnTime EarliestTime:=NextCheckTime, Procedure:="MonitorKeys", Schedule:=True
    End If
End Sub

' キーを監視し、イベントを処理するプロシージャ
Public Sub MonitorKeys()
    ' 計算量: O(1) - GetAsyncKeyStateは定数時間で実行される
    ' メモリ条件: 非常に小さい (数バイトのスタックフレーム)
    If Not IsMonitoring Then Exit Sub

    Dim KeyState_Esc As Integer
    Dim KeyState_Ctrl As Integer
    Dim KeyState_C As Integer
    Static IsEscPressedBefore As Boolean ' 前回の状態を保持
    Static IsCtrlCPressedBefore As Boolean ' 前回の状態を保持

    ' Escキーの状態を取得 (2024年4月23日 JST更新) [1]
    KeyState_Esc = GetAsyncKeyState(VK_ESCAPE)

    ' Ctrlキーの状態を取得
    KeyState_Ctrl = GetAsyncKeyState(VK_CONTROL)

    ' 'C'キーの状態を取得
    KeyState_C = GetAsyncKeyState(Asc("C")) ' アルファベットはASCIIコードで指定

    ' Escキーが現在押されているか?
    If (KeyState_Esc And &H8000) <> 0 Then
        If Not IsEscPressedBefore Then ' 押された瞬間
            MsgBox "Escキーが押されました。監視を停止します。", vbExclamation
            Call StopKeyMonitor
            Exit Sub
        End If
        IsEscPressedBefore = True
    Else
        IsEscPressedBefore = False
    End If

    ' CtrlキーとCキーが同時に押されているか?
    If (KeyState_Ctrl And &H8000) <> 0 And (KeyState_C And &H8000) <> 0 Then
        If Not IsCtrlCPressedBefore Then ' 押された瞬間
            MsgBox "Ctrl + C が押されました!", vbInformation
            ' ここにCtrl+Cに応じた処理を記述
        End If
        IsCtrlCPressedBefore = True
    Else
        IsCtrlCPressedBefore = False
    End If

    ' 次のポーリングをスケジュール
    Call ScheduleNextCheck
End Sub

実行手順:

  1. Excelを開き、Alt + F11を押してVBAエディタを開きます。

  2. 「挿入」メニューから「標準モジュール」を選択し、新しいモジュールに上記の「共通モジュールでのAPI宣言」と「コード1」をコピー&ペーストします。

  3. Excelシートに戻り、「開発」タブから「挿入」→「フォームコントロール」→「ボタン」をシートに配置します。

  4. ボタンを右クリックし、「マクロの登録」でStartKeyMonitorを選択して登録します。もう一つボタンを配置し、StopKeyMonitorを登録します。

  5. StartKeyMonitorボタンをクリックすると監視が開始され、Escキーを押すか、StopKeyMonitorボタンをクリックすると停止します。監視中にCtrl + Cを押すとメッセージが表示されます。

ロールバック方法: VBAエディタでモジュールを削除するか、StopKeyMonitorプロシージャを実行し、ボタンをシートから削除してください。

Access VBAでの実装例

Accessでは、フォームのTimerイベントを利用してポーリングループを構築できます。フォームがアクティブな間、指定した間隔でイベントが発生します。

コード2: Accessフォームでキー入力を監視し、ログとしてテキストボックスに記録

まず、Accessデータベース内に新しいフォームを作成し、以下のコントロールを配置します。

  • テキストボックス: txtKeyLog (Multiline: Yes, Scroll Bars: Vertical)

  • ボタン: btnStartMonitor (キャプション: “監視開始”)

  • ボタン: btnStopMonitor (キャプション: “監視停止”)

そして、フォームのコードモジュール(フォームを選択してAlt + F11 → プロジェクトエクスプローラーでフォームをダブルクリック → 「コードの表示」)に以下のコードをコピー&ペーストします。

' フォームのコードモジュールに記述 (例: Form_キー監視フォーム)

' 標準モジュールに記述したAPI宣言と仮想キーコード定数を使用します

Private Const MONITOR_INTERVAL_MS As Long = 100 ' ポーリング間隔 (ミリ秒)

' フォームが開かれたときの処理
Private Sub Form_Load()
    Me.TimerInterval = 0 ' 初期状態ではタイマーを停止
    Me.btnStopMonitor.Enabled = False
    Me.btnStartMonitor.Enabled = True
    Me.txtKeyLog.Value = "監視待機中..." & vbCrLf
End Sub

' 監視開始ボタンクリック時の処理
Private Sub btnStartMonitor_Click()
    IsMonitoring = True ' 共通モジュールのグローバル変数
    Me.TimerInterval = MONITOR_INTERVAL_MS ' タイマーをMONITOR_INTERVAL_MSミリ秒に設定
    Me.btnStartMonitor.Enabled = False
    Me.btnStopMonitor.Enabled = True
    Me.txtKeyLog.Value = "監視開始 (Escキーで停止)..." & vbCrLf
    DoCmd.SetWarnings False ' 警告メッセージを抑制 (2024年3月6日 JST更新) [9]
End Sub

' 監視停止ボタンクリック時の処理
Private Sub btnStopMonitor_Click()
    Call StopAccessKeyMonitor
End Sub

' フォームが閉じられたときの処理
Private Sub Form_Unload(Cancel As Integer)
    Call StopAccessKeyMonitor
End Sub

' Access用の監視停止プロシージャ
Private Sub StopAccessKeyMonitor()
    If Not IsMonitoring Then Exit Sub ' すでに停止している場合は何もしない

    IsMonitoring = False ' 共通モジュールのグローバル変数
    Me.TimerInterval = 0 ' タイマーを停止
    Me.btnStartMonitor.Enabled = True
    Me.btnStopMonitor.Enabled = False
    Me.txtKeyLog.Value = Me.txtKeyLog.Value & vbCrLf & "監視停止しました。"
    DoCmd.SetWarnings True ' 警告メッセージの抑制を解除 (2024年3月6日 JST更新) [9]
End Sub

' フォームのTimerイベントでキーの状態をチェック
Private Sub Form_Timer()
    ' 計算量: O(1) - GetAsyncKeyStateは定数時間で実行される
    ' メモリ条件: 非常に小さい (数バイトのスタックフレーム)
    If Not IsMonitoring Then Exit Sub

    Dim KeyState_Esc As Integer
    Dim KeyState_A As Integer
    Static IsEscPressedBefore As Boolean ' Escキーの前回状態
    Static IsAPressedBefore As Boolean   ' 'A'キーの前回状態

    ' Escキーの状態を取得
    KeyState_Esc = GetAsyncKeyState(VK_ESCAPE)

    ' 'A'キーの状態を取得 (仮想キーコード 'A' = &H41)
    KeyState_A = GetAsyncKeyState(Asc("A"))

    ' Escキーが押されたら監視停止
    If (KeyState_Esc And &H8000) <> 0 Then
        If Not IsEscPressedBefore Then
            Me.txtKeyLog.Value = Me.txtKeyLog.Value & Now & ": Escキーが押されました。監視を停止します。" & vbCrLf
            Call StopAccessKeyMonitor
            Exit Sub
        End If
        IsEscPressedBefore = True
    Else
        IsEscPressedBefore = False
    End If

    ' 'A'キーが押されたらログに記録
    If (KeyState_A And &H8000) <> 0 Then
        If Not IsAPressedBefore Then
            Me.txtKeyLog.Value = Me.txtKeyLog.Value & Now & ": 'A'キーが押されました。" & vbCrLf
            ' スクロールを最新行に合わせる
            Me.txtKeyLog.SelStart = Len(Me.txtKeyLog.Text)
            Me.txtKeyLog.SetFocus
        End If
        IsAPressedBefore = True
    Else
        IsAPressedBefore = False
    End If

    ' DoEventsは長時間処理でない限り不要だが、
    ' UI応答性を確保したい場合に数回に一度挟む (2023年1月21日 JST更新) [4]
    ' DoEvents

End Sub

実行手順:

  1. Accessデータベースを開き、Alt + F11でVBAエディタを開きます。

  2. 「挿入」メニューから「標準モジュール」を選択し、新しいモジュールに上記の「共通モジュールでのAPI宣言」をコピー&ペーストします。

  3. 新しいフォームをデザインビューで作成し、上記で指示した通りtxtKeyLogテキストボックス、btnStartMonitorbtnStopMonitorボタンを配置します。

  4. フォームのプロパティシートで、「イベント」タブの「タイマー時」を[イベントプロシージャ]に設定します。

  5. フォームのコードモジュールに上記の「コード2」をコピー&ペーストします。

  6. フォームを保存して開き、監視開始ボタンをクリックすると監視が開始されます。Escキーを押すか、監視停止ボタンをクリックすると停止します。監視中にAキーを押すと、txtKeyLogにログが記録されます。

ロールバック方法: VBAエディタで標準モジュールを削除し、フォームおよびフォームのコードモジュールを削除してください。

検証

実装したキー入力監視の動作とパフォーマンスを検証します。

キー入力の正確性

  • 単一キー: 設定したキー(Esc, Aなど)が正しく検知されるか、押しっぱなしや素早い連打でも問題ないかを確認します。

  • 組み合わせキー: Ctrl+Cなどの組み合わせが意図通りに検知されるかを確認します。片方のキーだけが押された場合に誤作動しないことも重要です。

  • 状態の変化: 押された瞬間 ((KeyState & &H8000) <> 0 And Not IsXXXPressedBefore) と、押され続けている間 ((KeyState & &H8000) <> 0) の区別が正しく行われるかを確認します。

アプリケーションへの影響(応答性)

  • ポーリング間隔: ポーリング間隔(ExcelのApplication.OnTimeやAccessのTimerIntervalで設定)を短くするほどCPU負荷は上がりますが、応答性は向上します。例えば、100ms(0.1秒)間隔でキー入力を監視しても、Excel/AccessのUI応答性が大きく損なわれないことを確認します。極端に短い間隔(例: 10ms以下)はCPUを過剰に消費する可能性があるため、注意が必要です。

  • UIフリーズ: 監視処理自体が長時間かからないため、UIがフリーズする可能性は低いですが、キー入力検知後の処理が重い場合はフリーズの原因となり得ます。そのような場合はDoEventsの挿入を検討します。

パフォーマンス測定

ポーリングループのオーバーヘッド

GetAsyncKeyStateの呼び出し自体は非常に高速です(通常、数マイクロ秒以下)。ポーリング間隔がパフォーマンスに最も大きく影響します。

  • 例 (Excel): StartKeyMonitorStopKeyMonitor の間に、何らかの重い処理を挟まない限り、ポーリング間隔を50msに設定しても体感的な遅延はほとんどありません。

  • ScreenUpdating / Calculation の効果: Excelのセルに頻繁に書き込んだり、数式を再計算したりするような「キー入力後の処理」がある場合、Application.ScreenUpdating = FalseApplication.Calculation = xlCalculationManual を導入することで、処理速度が数十倍から数百倍に向上することがあります。例えば、10000セルへの書き込みと数式更新を含む処理が通常10秒かかるところを、これらの設定を適用することで0.1秒以下に短縮できるケースも珍しくありません。

DoEventsの影響

ループ内でDoEventsを頻繁に呼び出すと、OSへの制御移行とVBAへの戻りにかかるオーバーヘッドで、全体の処理時間が数倍から数十倍遅くなる可能性があります。必要な場面でのみ、適切な頻度で使用することが肝要です。

運用上の注意点

リソース消費(CPU、バッテリー)

継続的なポーリングは、わずかながらCPUリソースを消費します。特にノートPCなどのバッテリー駆動デバイスでは、バッテリー寿命に影響を与える可能性があります。不要なときは監視を停止するように設計することが望ましいです。

エラーハンドリング

GetAsyncKeyState自体はエラーを発生させることは稀ですが、キー入力検知後の処理でエラーが発生する可能性はあります。On Error GoToステートメントなどを適切に配置し、予期せぬエラーによるアプリケーションの停止を防ぎます。

アプリケーション終了時のクリーンアップ

ExcelのApplication.OnTimeやAccessのTimerIntervalを利用している場合、アプリケーションが予期せず終了したり、VBAプロジェクトのリセットが行われたりすると、設定が解除されないことがあります。アプリケーション終了時やワークブック/データベースのクローズ時に、必ず監視を停止する処理(例: Workbook_BeforeCloseイベント、Form_UnloadイベントでのStopKeyMonitor呼び出し)を実装してください。

セキュリティとユーザーエクスペリエンス

  • 意図しない動作: ユーザーが予期しないタイミングでマクロが実行されると、混乱を招く可能性があります。監視が開始されていることをユーザーに明示的に通知することが重要です。

  • ショートカットキーの乗っ取り: 既存のOfficeショートカットキーを監視対象とする場合、そのショートカットキー本来の機能が失われるため、注意が必要です。代替手段を提供するなど、ユーザーエクスペリエンスを考慮してください。

落とし穴と代替案

バックグラウンドでのキーボードフックは難しい

GetAsyncKeyStateは、アクティブなアプリケーションのキーボード状態を監視するのに適していますが、VBAからOSレベルのグローバルキーボードフック(すべてのアプリケーションのキー入力を監視する機能)を実装するのは非常に困難です。VBAでは、バックグラウンドでシステム全体のイベントをフックするような低レベルな操作は、通常、VBA自体ではなく、C++などで書かれたDLL(外部ライブラリ)を介して行われます。本記事の要件では外部ライブラリが禁止されているため、この方法は採用できません。

OSレベルのイベントフックとの比較

より高度でシステム全体にわたるキー入力監視が必要な場合は、Win32 APIのSetWindowsHookEx関数を使ったキーボードフックが選択肢となります。しかし、これはVBAから直接実装するには複雑であり、DLL開発の知識が必要となります。GetAsyncKeyStateは、その簡易さとVBAでの実装しやすさから、Officeアプリケーション内部での用途には非常に強力なツールです。

仮想キーコードの多様性

キーボードレイアウトや言語設定によって、同じ物理的なキーでも仮想キーコードが異なる場合があります。国際的な環境で利用する場合は、特定のキーコードではなく、IMEの状態なども考慮に入れる必要があります。ただし、一般的な英数字キーや修飾キー(Ctrl, Shift, Alt)の仮想キーコードは比較的安定しています[2]。

まとめ

VBAでWin32 APIのGetAsyncKeyState関数を利用することで、ExcelやAccessにおいてリアルタイムかつ柔軟なキー入力監視システムを構築できます。Declare PtrSafeによるAPIの正しい宣言、Application.OnTimeForm_Timerイベントによるポーリングループの実現、そしてScreenUpdatingCalculation設定による性能チューニングは、実務レベルでの安定稼働に不可欠です。

本記事で紹介したコードは、キー入力監視の基本的なフレームワークを提供しますが、実際の業務要件に合わせて、検知後の処理やエラーハンドリング、ユーザーインターフェースなどをカスタマイズしてください。特に、リソース消費やユーザーエクスペリエンスに配慮した設計が、VBAマクロを長く安全に運用するための鍵となります。


参考文献

[1] Microsoft Learn. “GetAsyncKeyState function (winuser.h) – Win32 apps”. Last updated 2024年4月23日 JST. Available at: https://learn.microsoft.com/en-us/windows/win32/api/winuser/nf-win32-getasynckeystate

[2] Microsoft Learn. “Virtual-Key Codes (Winuser.h) – Win32 apps”. Last updated 2024年4月23日 JST. Available at: https://learn.microsoft.com/en-us/windows/win32/inputdev/virtual-key-codes

[3] Microsoft Learn. “Declare Statement (VBA)”. Last updated 2023年1月21日 JST. Available at: https://learn.microsoft.com/en-us/office/vba/language/reference/user-interface-help/declare-statement

[4] Microsoft Learn. “DoEvents function (VBA)”. Last updated 2023年1月21日 JST. Available at: https://learn.microsoft.com/en-us/office/vba/language/reference/user-interface-help/doevents-function

[5] Microsoft Learn. “Application.OnTime Method (Excel)”. Last updated 2023年12月15日 JST. Available at: https://learn.microsoft.com/en-us/office/vba/api/excel.application.ontime

[6] Microsoft Learn. “Application.ScreenUpdating Property (Excel)”. Last updated 2023年12月15日 JST. Available at: https://learn.microsoft.com/en-us/office/vba/api/excel.application.screenupdating

[7] Microsoft Learn. “Application.Calculation Property (Excel)”. Last updated 2023年12月15日 JST. Available at: https://learn.microsoft.com/en-us/office/vba/api/excel.application.calculation

[8] Microsoft Learn. “ADO (ActiveX Data Objects)”. Last updated 2023年12月16日 JST. Available at: https://learn.microsoft.com/ja-jp/sql/ado/ado-activex-data-objects?view=sql-server-ver16

[9] Microsoft Learn. “DAO (Data Access Objects) の使用”. Last updated 2024年3月6日 JST. Available at: https://learn.microsoft.com/ja-jp/office/client/access/using-dao-access

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