IPA午前2:システム開発プロセス

PowerAutomate

システムの稼働率をMTBFとMTTRを用いて計算する手順とポイントを解説。

背景

現代のビジネス環境において、ITシステムは基幹業務を支える不可欠な要素である。システムの停止はビジネス機会の損失や信頼性の低下に直結するため、システムの可用性を定量的に評価する指標が求められる。情報処理技術者試験の午前IIでは、この可用性を示す主要な指標である「稼働率」に関する計算問題が頻出する。稼働率の理解は、システム設計における冗長化や保守計画の策定において重要である。

問題点

IPA午前IIの稼働率に関する出題では、以下のポイントが理解不足による誤答を招きやすい。 * MTBF (Mean Time Between Failures: 平均故障間隔)MTTR (Mean Time To Repair: 平均修復時間) の概念の混同。 * 単一システム、直列システム、並列システムにおける稼働率の計算式の違い。 * 非稼働率(故障率)を用いた並列システムの計算方法の理解不足。

これらの概念を正確に把握し、適切な計算手順を適用する必要がある。

計算/手順

稼働率 (Availability, A) は、システムが利用可能である時間の割合を示す。MTBFとMTTRを用いて以下の式で算出される。

1. 稼働率の基本式

$$A = \frac{MTBF}{MTBF + MTTR}$$

  • MTBF (平均故障間隔): システムが稼働し始めてから次に故障するまでの平均時間。システムの信頼性を示す指標。
  • MTTR (平均修復時間): システムが故障してから修復されるまでの平均時間。システムの保守性を示す指標。

計算フロー

graph TD
    A["システム稼働率の算出"] --> B{"MTBFとMTTRの取得"};
    B -- MTBF --> C["平均故障間隔"];
    B -- MTTR --> D["平均修復時間"];
    C & D --> E["稼働率 = MTBF / (MTBF + MTTR)"];
    E --> F["稼働率の評価"];

2. 直列システムと並列システムの稼働率

複数のコンポーネントで構成されるシステムの場合、構成方式によって稼働率の計算方法が異なる。

a. 直列システム 全てのコンポーネントが正常に動作しないとシステム全体が稼働しない構成。ある1つのコンポーネントが故障するとシステム全体が停止する。

  • システム全体の稼働率 = 各コンポーネントの稼働率の積 $A_{series} = A_1 \times A_2 \times \dots \times A_n$
graph LR
    A["コンポーネント1 (A1)"] -- 処理 --> B["コンポーネント2 (A2)"] -- 処理 --> C["コンポーネント3 (A3)"]
    subgraph 直列システム
        A --- B --- C
    end
    style A fill:#f9f,stroke:#333,stroke-width:2px
    style B fill:#f9f,stroke:#333,stroke-width:2px
    style C fill:#f9f,stroke:#333,stroke-width:2px

b. 並列システム 複数のコンポーネントのうち、少なくとも1つが正常に動作していればシステム全体が稼働する構成(冗長化)。

  • システム全体の稼働率 = 1 – (各コンポーネントの非稼働率の積) 非稼働率 (D) は $D = 1 – A$ で表される。 $A_{parallel} = 1 – (D_1 \times D_2 \times \dots \times D_n)$ または $A_{parallel} = 1 – ((1 – A_1) \times (1 – A_2) \times \dots \times (1 – A_n))$
graph TD
    subgraph 並列システム
        A["コンポーネント1 (A1)"]
        B["コンポーネント2 (A2)"]
        C["コンポーネント3 (A3)"]
    end
    A --- D["出力"]
    B --- D
    C --- D
    style A fill:#9cf,stroke:#333,stroke-width:2px
    style B fill:#9cf,stroke:#333,stroke-width:2px
    style C fill:#9cf,stroke:#333,stroke-width:2px

計算例

  • 前提: あるコンポーネントのMTBFが990時間、MTTRが10時間とする。
  • 単一コンポーネントの稼働率: $A = \frac{990}{990 + 10} = \frac{990}{1000} = 0.99$ (99%)

  • 直列システム(上記コンポーネント2台構成): $A_{series} = 0.99 \times 0.99 = 0.9801$ (98.01%)

  • 並列システム(上記コンポーネント2台構成): 非稼働率 $D = 1 – 0.99 = 0.01$ $A_{parallel} = 1 – (0.01 \times 0.01) = 1 – 0.0001 = 0.9999$ (99.99%)

要点

  • 稼働率はMTBFとMTTRで算出されるシステム可用性の指標。
  • 直列システム全体の稼働率は各コンポーネント稼働率の積。
  • 並列システム全体の稼働率は1から各コンポーネント非稼働率の積を引く。
  • MTBFとMTTRの定義を正確に理解し、適切な計算式を適用することが重要。
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