プロンプト入出力契約によるLLM応答制御の設計と評価

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本記事はGeminiの出力をプロンプト工学で整理した業務ドラフト(未検証)です。

プロンプト入出力契約によるLLM応答制御の設計と評価

大規模言語モデル(LLM)の応用において、その応答の信頼性と予測可能性は不可欠です。特にシステム連携や自動化ワークフローに組み込む場合、単なる自由形式のテキストだけでなく、構造化された、かつ制約に準拠した出力が求められます。本記事では、LLMの応答を厳密に制御するための「プロンプト入出力契約」の設計、プロンプト手法、評価、誤り分析、そして改良について詳述します。

1. ユースケース定義

あるWebサービスにおいて、ユーザーからの問い合わせ内容を分析し、以下の情報をJSON形式で抽出することを想定します。

  • request_type: 問い合わせの種類(例: support, billing, feature_request

  • priority: 緊急度(例: high, medium, low

  • summary: 要約(日本語、50文字以内)

  • product_id: 関連する製品ID(任意、数字のみ)

この情報は、その後のチケットシステムへの連携や担当部署へのルーティングに利用されます。

2. 制約付き仕様化:プロンプト入出力契約の定義

LLMに対するプロンプト入出力契約は、期待される挙動を明文化したものです。

2.1. 入力フォーマット

ユーザーからの自由形式の問い合わせテキストを想定します。 例: 「パスワードをリセットしたいのですが、どこからできますか?製品X001です。」

2.2. 出力フォーマット

厳格なJSON形式を要求します。

{
  "request_type": "string",
  "priority": "string",
  "summary": "string",
  "product_id": "number"
}
  • request_type: 必須、support, billing, feature_request のいずれか。

  • priority: 必須、high, medium, low のいずれか。

  • summary: 必須、日本語、50文字以内。

  • product_id: 任意、数字のみ、存在しない場合はJSONから省略。

2.3. 失敗時の挙動

  • 構造エラー: JSON形式が不正な場合、または必須フィールドが欠落している場合、空のJSON {} を出力し、エラーメッセージを標準エラー出力に記録する。

  • 値エラー: フィールドの値が定義された列挙型(request_type, priority)に合致しない場合、またはsummaryが文字数制限を超える場合、最も近い妥当な値に補正するか、unknownなどのデフォルト値を設定する。補正が困難な場合は、空のJSONを出力する。

2.4. 禁止事項

  • ユーザーの個人情報(氏名、メールアドレス、電話番号など)をsummaryやその他のフィールドに直接含めない。

  • JSON以外の形式(プレーンテキスト、マークダウンの箇条書きなど)での出力を禁止する。

  • 指定されたrequest_typeおよびpriorityの列挙型以外の値を生成することを禁止する。

3. プロンプト設計

上記入出力契約を満たすため、異なるプロンプト設計アプローチを検討します。 システムの指示は、モデルの振る舞いを決定する上で重要です。

3.1. ゼロショット制約型プロンプト

基本的な指示と制約のみを与えます。

あなたはユーザーの問い合わせを分析し、指定されたJSON形式で情報を抽出するアシスタントです。

制約事項:

1. 出力は厳密にJSON形式のみとします。

2. 以下のスキーマに従ってください。
   {
     "request_type": "string (support|billing|feature_request)",
     "priority": "string (high|medium|low)",
     "summary": "string (日本語、50文字以内)",
     "product_id": "number (数字のみ、存在しない場合はキーを省略)"
   }

3. `request_type`と`priority`は、指定された値の中から選択してください。

4. `summary`は、個人情報を含まず、50文字以内の日本語で簡潔に要約してください。

5. 上記の制約を満たせない場合、空のJSON `{}` を出力してください。

問い合わせ: 「パスワードをリセットしたいのですが、どこからできますか?製品X001です。」
JSON出力:

3.2. 少数例制約型プロンプト

いくつかの入出力例を提供し、モデルにパターンを学習させます。

あなたはユーザーの問い合わせを分析し、指定されたJSON形式で情報を抽出するアシスタントです。

制約事項:

1. 出力は厳密にJSON形式のみとします。

2. 以下のスキーマに従ってください。
   {
     "request_type": "string (support|billing|feature_request)",
     "priority": "string (high|medium|low)",
     "summary": "string (日本語、50文字以内)",
     "product_id": "number (数字のみ、存在しない場合はキーを省略)"
   }

3. `request_type`と`priority`は、指定された値の中から選択してください。

4. `summary`は、個人情報を含まず、50文字以内の日本語で簡潔に要約してください。

5. 上記の制約を満たせない場合、空のJSON `{}` を出力してください。

例1:
問い合わせ: 「新しい機能について要望があります。決済方法が増えると嬉しいです。」
JSON出力:
```json
{
  "request_type": "feature_request",
  "priority": "medium",
  "summary": "新しい決済方法の追加要望"
}

例2: 問い合わせ: 「請求書の内容が間違っています。先月の分ですが、至急確認してください。製品IDはY005です。」 JSON出力:

{
  "request_type": "billing",
  "priority": "high",
  "summary": "請求書の内容誤りに関する確認依頼",
  "product_id": 5
}

問い合わせ: 「パスワードをリセットしたいのですが、どこからできますか?製品X001です。」 JSON出力:

### 3.3. Chain-of-Thought(CoT)制約型プロンプト

モデルに思考プロセスを明示させ、最終的な出力に制約を適用します。これにより、複雑な制約への準拠を促します。

```text
あなたはユーザーの問い合わせを分析し、指定されたJSON形式で情報を抽出するアシスタントです。
以下の手順で思考し、最終的なJSON形式の出力のみを生成してください。

手順:

1. 問い合わせ内容から、`request_type`(support, billing, feature_request)、`priority`(high, medium, low)、`summary`(50文字以内、個人情報なし)、`product_id`(数字のみ)を特定する。

2. 各値が制約に合致するか確認する。

3. すべての制約を満たしていることを確認した後、最終的なJSONを出力する。

4. 一つでも制約を満たせない場合は、空のJSON `{}` を出力する。

制約事項:

*   出力は厳密にJSON形式のみ。

*   スキーマ:`{"request_type": "string", "priority": "string", "summary": "string", "product_id": "number"}`

*   `request_type`と`priority`は指定された列挙型から選択。

*   `summary`は日本語50文字以内、個人情報を含まない。

*   `product_id`は数字のみ、存在しない場合はキーを省略。

問い合わせ: 「パスワードをリセットしたいのですが、どこからできますか?製品X001です。」
思考プロセス:

1. 問い合わせ内容は「パスワードリセット」であり、サポート案件と判断できる。

2. 緊急度については明示されていないが、一般的なサポート案件として「medium」とする。

3. 要約は「パスワードリセットの依頼」。50文字以内。個人情報なし。

4. 製品X001から`product_id`を1と特定できる。(「X」は無視し、数字部分のみを抽出)。

5. 全ての制約を満たしている。
JSON出力:

4. 評価

プロンプトの有効性を評価するため、複数のシナリオと自動評価手法を組み合わせます。

4.1. 評価シナリオ

  • 正例: 全ての情報が明確で、制約に完全に合致する期待される出力が得られるケース。

    • 例: 「アカウントのパスワードをリセットしたいです。至急お願いします。製品A123を使用しています。」
  • 難例: 一部の情報が曖昧、または欠落しているケース。

    • 例: 「どうしたらいいのかわからない。手伝ってほしい。」 (request_type, priorityが不明確)

    • 例: 「先月の請求書が届きません。製品のバージョンは5.0です。」 (product_idが数字のみではない、製品IDではない情報)

  • コーナーケース: 制約の限界を試すケース。

    • 例: 「私の名前は山田太郎、メールアドレスはexample@test.comです。ログインできません。」 (個人情報、summary文字数オーバーの可能性)

    • 例: 「全く新しい概念の機能アイデアがあるのですが、どこに送ればいいですか?」 (request_typeがfeature_request以外に迷う可能性)

    • 例: 「JSON形式で出力する必要はないはずだ。普通の文章で書いてくれ。」 (出力形式指定の無視を誘発)

4.2. 自動評価の擬似コード

LLMの応答をプログラムで自動的に評価するための擬似コードです。Pythonを想定します。

import json
import re

def evaluate_llm_output(llm_output: str, expected_schema: dict) -> dict:
    score = 0
    feedback = []

    # 1. JSON形式の検証

    try:
        parsed_output = json.loads(llm_output)
        score += 10 # JSON形式が正しい
    except json.JSONDecodeError:
        feedback.append("ERROR: 出力が有効なJSONではありません。")
        return {"score": score, "feedback": feedback}

    # 2. スキーマと必須フィールドの検証

    if not isinstance(parsed_output, dict):
        feedback.append("ERROR: JSONのルート要素がオブジェクトではありません。")
        return {"score": score, "feedback": feedback}

    required_fields = ["request_type", "priority", "summary"]
    for field in required_fields:
        if field not in parsed_output:
            feedback.append(f"ERROR: 必須フィールド '{field}' が欠落しています。")
            score -= 5

    # 3. 各フィールドの制約検証


    # request_type

    if "request_type" in parsed_output:
        valid_types = ["support", "billing", "feature_request"]
        if parsed_output["request_type"] in valid_types:
            score += 5
        else:
            feedback.append(f"WARNING: 'request_type' の値 '{parsed_output['request_type']}' が不正です。")
            score -= 3

    # priority

    if "priority" in parsed_output:
        valid_priorities = ["high", "medium", "low"]
        if parsed_output["priority"] in valid_priorities:
            score += 5
        else:
            feedback.append(f"WARNING: 'priority' の値 '{parsed_output['priority']}' が不正です。")
            score -= 3

    # summary

    if "summary" in parsed_output:
        summary_text = parsed_output["summary"]
        if isinstance(summary_text, str):
            if 0 < len(summary_text) <= 50:
                score += 5
            else:
                feedback.append(f"WARNING: 'summary' の文字数 ({len(summary_text)}文字) が範囲外です (1-50)。")
                score -= 3

            # 個人情報チェック(簡易的な例)

            if re.search(r'(名前|氏名|電話番号|メールアドレス|住所)', summary_text):
                 feedback.append("WARNING: 'summary' に個人情報と思われる記述が含まれています。")
                 score -= 10 # 重大な違反
        else:
            feedback.append("ERROR: 'summary' の値が文字列ではありません。")
            score -= 5

    # product_id

    if "product_id" in parsed_output:
        product_id_value = parsed_output["product_id"]
        if isinstance(product_id_value, (int, float)) and product_id_value >= 0: # floatも許容し、intに変換できる前提
            score += 5
        else:
            feedback.append(f"WARNING: 'product_id' の値 '{product_id_value}' が不正です (数字のみ)。")
            score -= 3

    # 全てのフィールドがスキーマにない余計なものを含んでいないか(厳密な評価の場合)

    for key in parsed_output:
        if key not in expected_schema:
            feedback.append(f"WARNING: 不明なフィールド '{key}' が出力に含まれています。")
            score -= 1

    return {"score": max(0, score), "feedback": feedback, "parsed_output": parsed_output}

# 期待されるスキーマの定義 (キーの存在チェックと型チェック用)

expected_schema = {
    "request_type": "string",
    "priority": "string",
    "summary": "string",
    "product_id": "number"
}

# 評価例


# llm_output_example = '{"request_type": "support", "priority": "medium", "summary": "パスワードリセットの依頼", "product_id": 1}'


# print(evaluate_llm_output(llm_output_example, expected_schema))

# llm_output_error = '{"request_type": "invalid", "summary": "短い要約"}'


# print(evaluate_llm_output(llm_output_error, expected_schema))

5. 誤り分析と改良

評価を通じて発見された失敗モードを分析し、プロンプトやシステムを改良します。

5.1. 失敗モード

  • 幻覚(Hallucination):

    • LLMが問い合わせに存在しないproduct_idを推測して生成する。

    • 無関係なrequest_typepriorityを割り当てる。

  • 様式崩れ(Malformed Output):

    • JSON形式が不正(例: カンマの欠落、引用符のミス)。

    • 指定された列挙型以外の値を出力する(例: priorityurgentになる)。

    • summaryが50文字を超える、または空になる。

  • 脱線(Off-topic/Deviation):

    • JSON形式だけでなく、追加の解説文や挨拶を生成してしまう。

    • 空のJSONを返す代わりに、独自の判断でメッセージを出力する。

  • 禁止事項違反:

    • summaryに個人情報を含めてしまう(例: ユーザーのメールアドレスを要約に入れる)。

    • product_idに数字以外の文字が含まれる。

5.2. 抑制手法

  • System指示の強化:

    • プロンプトの冒頭に、LLMの役割と「出力はJSON形式のみとし、余計なテキストは一切含めない」という指示を強調して記述する [6]。

    • 「制約を満たせない場合は空のJSON {} を出力すること」を明確に指示する。

  • 検証ステップの導入:

    • LLMからの出力後、上記の自動評価擬似コードのような外部バリデーター(例: Pydantic [8] を用いたJSONスキーマ検証)を挟む。

    • バリデーターでエラーを検知した場合、システムエラーを記録し、ユーザーへの適切なフィードバックや代替処理を行う。

  • リトライ戦略:

    • バリデーターでJSONの形式不正や必須フィールド欠落などのエラーが検知された場合、元のプロンプトにエラー情報を付加してLLMに再試行させる [7]。

    • 例: 「前回の出力はJSON形式が不正でした。エラー: [エラーメッセージ]。再度、厳密にJSON形式で出力してください。」

  • 少数の失敗例の提示:

    • 少数例プロンプトにおいて、期待される成功例だけでなく、意図的に失敗させた入力に対する「空のJSON {}」の出力例を提示することで、失敗時の挙動を明示的に学習させる。

6. 再評価と反復

改良後、再度評価シナリオを用いて、プロンプトの性能と堅牢性を確認します。この「プロンプト→モデル→評価→改良」のループを繰り返し、目標とする精度と信頼性を達成するまで反復します。

graph TD
    A["プロンプト設計"] --> |入力と契約を定義| B{"LLMモデル"};
    B --> |出力| C["LLM応答"];
    C --> |検証と採点| D["評価モジュール"];
    D --> |評価結果| E{"期待される出力か?"};
    E -- 良い --> F["デプロイ"];
    E -- 悪い --> G["誤り分析"];
    G --> |改善点| A;

グラフの説明: プロンプト設計から始まり、LLMモデルが応答を生成。評価モジュールで応答を検証し、期待される出力でなければ誤り分析を経てプロンプト設計に戻る改良ループを示す。

7. まとめ

プロンプト入出力契約は、LLMの予測不能性を管理し、ビジネスシステムに組み込む上で極めて重要なアプローチです。2024年2月15日に発表されたGemini 1.5 Pro [1] や2024年5月13日に登場したGPT-4o [2] のように、最新のLLMは構造化出力の生成能力が向上していますが、厳格な制御には依然として丁寧なプロンプト設計と外部検証が必要です。明確な契約定義、多角的なプロンプト手法、体系的な評価、そして失敗モードに基づいた反復的な改良サイクルを通じて、LLMの応答を安定させ、信頼性の高いAIアプリケーションを構築することが可能になります。

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